小さい頃から、家にはお金がない、とずっと聞かされていました。
ですので、その当時は女性が結婚、子育てをしながら、仕事をするのが珍しい時代であったにもかかわらず、母親は仕事をしていました。保育園などに小さい子どもを預けるような時代ではなかったということもあって、私は祖母にしばらくの間預けられており、両親とは離れて生活をしていました。
妹が生まれたことで、母は仕事を辞め、私も両親と再度暮らすようになりました。当時の家は、いわば社宅のようなもので、周囲には同じ年代の人が多く生活していましたので、そういった子どもたちと遊んでいました。
小さい頃の子供の遊びといえば、ごっこ遊びです。リカちゃん人形が発売されて、リカちゃんハウスで、リカちゃん人形を使って遊ぶということが女の子の遊びの主流になっていた時代に、私にはリカちゃんはいませんでした。
リカちゃんがいない、ということは、周囲の子どもと遊んでもらえない、ということなのです。もちろん、そういった、家で遊ぶ遊びだけではなく、外で遊ぶ遊びもあるのですが、外遊びとなると、今度は主流は自転車に乗って遊ぶということが流行っていました。
しかし、自転車も買ってもらえなかったので、それでもその遊びに加わりたいときには、自転車をこぐ友達の横を全速力で走る、という、それしかありませんでした。
親に何度も何度も、リカちゃん買って、リカちゃんハウス買って、自転車買って、と頼みましたが、仕事を辞め、二人の子どもがいて、少ない父の給料で生活をしていた我が家にはそのような余裕はありませんでした。
とあるとき、母が祖母に手紙を書くから、といって、私にも手紙を書くように言いました。子どもの浅はかな考えですから、母が中身をチェックするなんて、まったく考えず、リカちゃん人形が欲しいので、お金を1万円送ってください、ということを書いたわけです。当然、母に見つかって、ものすごい勢いで叱られました。
それがだめなら、ということで、今度は隣に住んでいた人が、お子さんのいらっしゃらない方で、私のことを大変かわいがってくださっていたために、その人にリカちゃん人形を買ってもらえないか、と頼んだことがあり、これも、悪気なく、その方が私の母に私がそういったことを言っていた、ということを話しました。このときも、烈火のごとく叱られました。
結局、私がリカちゃん人形を手にしたのは、中学1年生のときです。もうとうの昔に、リカちゃんごっこは卒業している年齢になって、それでもどうしてもあきらめきれず、お年玉をためて、買いました。
今でもリカちゃん人形を見ると、あの貧乏だった子供の頃を思い出します。
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