私はこれまで、本当の意味で恋愛をしたことがありません。
それどころか、自分の中に「恋愛感情」というものが備わっているのかさえも不明です。
そんな自分の性質を、「男性と接する機会が少ないからだ」と考えた私は、二十代前半のころ、街コンや合コンに手当たり次第に参加しました。
そんな中で出会ったのが、Sさんという男性です。
その人は自分より5歳年上の男性で、お堅い職業に就いており、性格が良く、趣味も合う、という、今考えれば素晴らしい男性でした。
私はSさんに、何度か会った末に告白され、それを受け入れましたが、Sさんを好きだったのか?と問われれば、首を横に振らざるを得ません。
私は、Sさんと付き合いたかったのではない、「誰かと」付き合いたかったのです。
「誰かと」付き合えば、「自分には恋愛ができないのかもしれない」という葛藤から一時的に逃れられますし、続々と彼氏を作り始めた友人たちとの話題もできます。
そして、「彼氏持ち」という世間体を手に入れることができるのです。
私は、自分の選択が間違っているような気がしながらも、「付き合っていく中できっと相手を好きになるだろう」と自分に言い聞かせ続けました。
ところが、付き合って半年以上経っても、そうはなりませんでした。
この恋愛もどきでの失敗した点・反省点は、考えればいくらでも思い浮かびます。
そもそも、「自分が相手を恋愛的な意味で好きではない・好きになれるか分からない」という点を相手に最後まで隠し続けたこと、自分の体が弱く、体調が悪い日が多いといこともまた隠し続けたこと…。
まとめて言えば、「素の自分を相手に隠してしまったこと」が一番の失敗だったと思います。
猫を被ったまま付き合うのですから、どうしても疲れますし、だんだん素の自分との乖離や齟齬が気になってきます。
また、相手が自分に向けてくれる好意と、自分が相手に向けている好意とのギャップも大きくなる一方で、別れた一番のきっかけだって、相手にキスをされ、相手のことが怖くなってしまったことだったのだからお笑いです。
結局、私は最後まで、素の自分を何ひとつSさんに見せることなく、持病が悪化したことを主な理由として彼に別れを切り出し、表面上は円満に別れました。
あの半年間は、私にとっては必要な経験でしたが、彼に必要なことだったとは思えません。
あんな良い人を、半年もの間私のところにとどめてしまったことについては、今でも後悔しています。
素の自分を隠し続けて失敗