私が住んでいる家は川辺が近くて、夏になると川遊びに出かけるのが恒例になっていました。
いつものように川遊びを友達としていたのです。
幼い頃から遊んでいた場所だから問題ないと思っていたのですが、足を取られてそのまま流されてしまい、緩やかな水の流れがどんどんと早くなっていき、そのうち濁流になり身動きをすることができなくなってしまったのです。
私はこのままでは溺れてしまうという命の危機を感じて、近くの岩場に捕まろうとするのですが、スルスルと離れていき、川の水を飲みながら必死に顔をだして川釣りをしている人に必死に助けを求めました。
一緒に遊んでいた友達も流される私を見て慌てて「誰か助けて!」と叫びながら川辺から流される私を必死に追いかけてくれているのが見えるのですが、その姿が遠ざかっていくのでした。
手足には岩がガンガンとぶつかっていき、そのうち周囲の景色が見えなくなっていき、全身が水に飲み込まれていき、私はここで命を絶つのだという絶望感ともがき続けた疲労からもうどうなってもいいと感じ、全身の力が抜けていくのを感じたのです。
苦しい、けどもう無理だと思った瞬間、誰かが私のことを強く引き寄せてくれたのです。
腕をガシッと掴まれた瞬間、濁流の仕業だと思い、このまま川に飲み込まれると思ったのですが、その手は私のことを助けてくれた手だったのです。
知らない男の人の声で「おい!大丈夫か!」と焦っている声を聞きながらも、私は意識が朦朧としていて、助かったのか夢なのかも分からないような状態でした。
ただ、一生懸命呼び掛けてくれるその声すらうるさいなと感じてしまったのですが、遊んでいた友達が駆けつけて泣きじゃくる声と友達に対して「もう大丈夫」と声をかけているそのやり取りを耳にして、ようやく私は助かったんだと実感できたのです。
その後、私はどうやって帰宅したのかも覚えていません。
救急車を呼ぼうとするのを必死に止めたのを覚えています。
もしも私を助けてくれた釣り人がいなかったらと思うとゾッとしてしまいます。
いつも遊んでいるからという安心感がこのような命の危機を生んだのだと反省しました。
現に、その川で命を落とされている人は少なくないことを知っていたのですから。油断していたことが悪いとは思っていますが、それ以降は水が怖くなってしまい、川へ足を運ぶ恒例の夏は終わりを告げました。
水の事故のニュースを聞くと、このときの体験をついつい思い出してしまいます。