私は、それまで自分がしっかりしなくては、という気持ちがとても強かったんです。
一人っ子で育ち、両親から周囲からも、自立を促されていましたし、私自身もそう考えていました。
周囲を頼ってはいけないのだと、どこかで思っていたために、私は、心に余裕を持つことができなくなっていました。
難しい案件も一人でこなそうと考え、頼まれるまま仕事をこなしていたんです。
そんなある日、私の心のバランスが途切れてしまったんです。
無気力になってしまい、何をするにもやる気が起きなくなってしまったんです。
そして、なぜか涙が勝手に流れてくるようになったんです。
哀しいわけでもないのに、なぜか気持ちが落ち込むようになり、私は、どうしたらいいのかわからなくなってしまいました。
そこで、私は一人で旅行に行くことにしたんです。
気晴らしといえば格好は良いですが、早い話が現実逃避をしたのです。
私にとって、一人旅は初めてのことだったので、なにもかもが新鮮でした。
旅先に選んだのは、沖縄です。
北海道に住む私にとっては、真逆の地域でした。
気候もそうですが、食文化も全然違い、カラフルな魚や見たこともない大きな貝に、驚かされました。
出てきた料理の数々はどれも美味しいものばかりで、こんなに美味しい料理を知らずに過ごしてきたのかと思い後悔しました。
景色も綺麗で、海は果てしなく、いつしか私の心は自然に回復していました。
何よりも、沖縄の人の、あののんびりとしたイントネーションが、なんとも心を軽くしてくれるのです。
旅をしてみて、良かったと思いました。
人生を変えることは、容易いことではありませんでした。
自分の性格はなかなか変えることができないと思っていたからです。
ですが、沖縄を旅していたときの、なんてもいえない解放感を思い出す度に、人生は焦るものではないと、自分に言い聞かせるのです。
人生を変えるきっかけは、小さな沖縄旅行でしたが、私には大きな意味がありました。
それまで、片意地ばかり張っていた私ですが、このことをきっかけにして、人を頼るということを覚えました。
そして、いい意味で気を抜くことができるようになり、リラックスするコツを身に付けるようになりました。
周囲からも、表情が変わったとか、明るくなったみたいだねと言われるようになって、とても嬉しくなりました。
人生は、小さなことからやり直しができるのだということを、自分の身で体感した感じです。